この背景には、フィードインタリフ(FIT)制度と呼ばれる、いわばドイツ政府の発明がある。FITは、太陽光発電による電気の100%を(各家庭で消費させるのではなく)20年間にわたって家庭の電気の購入価格の約4倍の価格で電力会社が買い取ることを政府が保証する制度である。FITは、投資を考える人々にとって太陽光発電を運営すること自体が金銭的に魅力あるものに仕立てあげている。
個人が家庭の屋根に太陽電池を200─300万円かけて設置すれば、翌日から発電事業主となるのだ。収入を得ながら最初の10年で元を取り、残りの10年は収入のすべてが利益になるという簡単な計算ができる。
ドイツでは、将来の年金対策のような感覚で個人が自分の家の屋根に太陽電池を設置しており、環境問題に興味がない人にとっても投資対象として大きな魅力がある。南ドイツを中心として、2008年末までに、個人の家や倉庫、工場などの屋根に累計3500メガワットの太陽電池が設置されたといわれている。この3500メガワットの太陽電池が設置されたのは、ドイツ国内全体で太陽電池が設置可能な南向きの建物の屋根の1%未満に過ぎず、マーケットの将来性は大きいと見られている。
ドイツ政府は内需拡大や雇用確保のために、太陽電池やインバーターなどの関連産業育成を重視していたといえる。その結果、導入直後には30万人の新たな雇用を創出した。
シャープを抜き世界一のセルメーカーに育ったQセルズに代表されるように、数々の太陽電池関連産業が生まれた。小さな工務店だった会社が、システムインテグレーターと呼ばれる上場会社に育ち、年間数兆円ともいわれる市場が確立されたのだ。ドイツ政府は、FITがけん引力になり、2020年には太陽光発電関連産業がドイツの自動車産業を上回る規模に拡大すると予測している。
ドイツでのFIT導入時には、電力会社に通常の4倍という高い価格で電気を買い取る義務を負わせる一方で、そのコストを補うために、電気を消費するビルに対して毎月の電気代に加えて約250円程度のFITの代金を請求する権利を与えた。
電力会社には電力買い取り契約の手続き簡素化やグリッドへのスムースな配線、グリッドの安定的運営の義務を負わせている。つまり、太陽光発電の高いコストはドイツ国民全体が広く薄く負担するということで、政府、電力会社、さらに国民が一体となり、同一レベルの目的意識を持って進めるという社会全体のコンセンサスが得られているのだ。
日本でもFITの導入や電気自動車の販売、将来に向けたスマートグリッドの導入などが動きだしている。各家庭の屋根で発電した電気の売電に加え、マイカーに溜めてそれを家庭で使用するというように、従来の電力会社からの一方通行の電気の流れが、構造そのものから大きく変わろうとしている。
ドイツのFITをお手本としながら、日本においてもリチウムイオン電池などの蓄電池や太陽電池などのさらなる技術開発の下で、官民一体となった市場・雇用の創出、産業の育成が行われ、太陽光発電の分野で世界を再びリードできる体制が構築されることを願っている。
ロイター
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